海技士(機関)筆記試験の勉強方法

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船舶職員になるためには必須である海技士試験の勉強方法について紹介したいと思います。

今回は、商船大学、商船高専、自社養成コース向けに、私が海技士(機関)2級及び1級の筆記試験の合格した時の勉強方法について解説していきます。

 

 

海技士とは

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海技士とは大型船にて、航海士、機関士として働くために必要な免状のことです。これは「STCW条約」に基づいて整備された「船舶職員及び小型船舶操縦者法」に準じている資格です。

 

船では職位がわかれています。例えば、機関部では機関長、1等機関士、2等機関士、3等機関士とわかれ、その下に部員がいます。

所持している海技士免状によって、担当できる職位が決まります。(具体的に言えば機関出力や航行区域、社内規定にも則るため一概には言えません)

 

そんな海技士ですが、口述試験を受けるには定められた乗船履歴や条件をクリアする必要があるので、基本的には学生の間にとることは不可能です。しかし、筆記試験を学生の間に合格しておき、社会人になって乗船履歴を埋めて口述試験を受けるという方法が一般的になっています。

しかも、外航海運に進む人は、採用条件に2級海技士の筆記試験合格が条件に入っていることも多々あるため、必須といっても過言ではありません。

また、船会社に就職した人間が口をそろえて言うのは、1級筆記は在学中にとるほうがよい、ということです。海技士試験は若手の実務とはかけ離れている傾向にあります。ドッグの経験や新造船の経験などがなければまず触れないような知識や、機関長経験者ですらやったことのない項目が出てきたりします。

そのため、もし就職後にとろうとした場合、一から勉強しなおさなくてはならない項目が大量に出てくるでしょう。しかも、その勉強が休暇に来るので更に辛いことになります。

ですから、海技士2級及び1級筆記は就職シーズンに入る前には持っておくとよいでしょう。

 

勉強方法 ~準備編~

さて、具体的な勉強方法に入っていきたいと思います。

これから勉強を開始する方は1級及び2級の問題集、海技士用の英和辞典の計4冊と製図セットを購入してください。購入する本は

 

  

 

海技士の問題集は中古でも構いませんし、海技士の機関英和辞書はどれも似たようなものばかりの印象なのでこれ以外でも大丈夫です。(持ち込み可のものにする)

 

解説でわかる問題集は他の問題集とは違い、解答とは別に解説がついていることが特徴です。私の大学時代の友人は2級に関してはこれだけで合格している人も十分いました。ただし、問題点として一部解答が徹底攻略問題集と違ったり、解答がふんわりとしているなという印象です。ただ、解答についている解説は、初学者でもわかりやすく書かれており、対策問題集としてはかなり貴重な1冊です。

 

徹底攻略問題集は東京海洋大学の教授・准教授が解答を書いた問題集です。解説こそついていませんが、解答全てが具体的で、アカデミック寄りに書かれていることが特徴です。問題点として、難しい記述が多くよくわからないことが多いところです。

 

もし、金銭的に余裕があるか、近所に海事系の本がある図書館あれば、二級海技士(機関)800題 問題と解答一級海技士(機関)800題 問題と解答の問題集手を手に入れるとよいでしょう。これらの問題集の特徴は最新の問題が収録されているところです。前述した本はいずれも英語の問題がほとんどついていません。

800題シリーズは毎年出てる上、古いものであれば比較的中古でも安く手に入りやすいので、英語対策用にオススメです。英語に少しでも自信がある人であれば、本屋で英語問題を軽く立ち読みして雰囲気をつかむだけで十分かもしれません。

 

勉強方法 ~実践編①~

海技士筆記試験は暗記が全てと言われますが、実際には3分の1程度は関連付けて理解できるものです。機器の点検項目には大抵発熱とか振動がありますし、油圧機器であれば漏れにも気を付けなくてはならない、蒸気の速度の式を求める問題ならば運動エネルギーと絡めて考えるとよい、など。このような理解は、解説からではなく周回を重ねることによって見えてきます。ですから、私がオススメする勉強法は周回法及び書き込みです。

 

周回法ではノートなどを準備せずに、まず解説付き問題集を3周以上します。

1周目は適当に読んでいきます。雰囲気をつかむことや簡単な問題はここで答えられると思います。

2周目では解説を読みながら気になったところや、わかった事柄、知らない用語の意味を書き込んでいきます。例えば、蒸気の速度式を求める問題では、運動エネルギー(1/2)mv^2から変形しなくてはならないから、ルートがついたものが正解、だとかを小さくメモしていきます。

3周目以降はそれを意識しながら読み進めます。

 

このまま、この本の周回を重ねても合格は可能だと思いますが、1級へのステップアップも考え、3周目から徹底問題集へと移ります。徹底問題集は解答が難しくはなりますが、基本的には同じ問題が収録されていますので、解答の意味は同じはずです。それを踏まえながら解説付きと同様に周回をひたすら重ねて、書き込みも行っていきましょう。最終的には4日で1周できるレベルになるはずです。

 

2級にある製図と、計算問題だけは試験時期が近付いたら実際にノートにやってみましょう。どちらも走り書きでいいです。製図は大学で製図の授業を受けていればそれでもいいですが、そうでなければ、製図の本を買って勉強しましょう。私は製図授業があったので、どのような本がいいかはわかりません。ご自身で試行錯誤してみてください。製図問題も過去問から出ますし、そこまで難しい製図法は出ませんので独学でも十分だと思います。

 

勉強方法 ~実践編②~

海技士機関試験では

・機1 推進機関に関する問題

・機2 補器に関する問題

・機3 工学、材料の知識に関する問題

・執務 執務一般に関する問題及び英語

の4つに大別されています。

難易度としては私の主観で

機2>機1>執務≧機3

といった感じです。

勉強するときは、機2及び機1を優先的に勉強することによって効率的になるかと思います。

執務の英語は日本語に訳す問題となります。問題内容も機関の説明書などで、なじみのない英文となっています。私自身、1年ほど英語をかなり頑張っていた時期もあり、そこまで難しくは感じませんでした。英語は外航海運会社ではよく使うことになると思いますので、海技士とは別に勉強してみてください。私はその下地もあったおかげか機関辞書のみで難なく合格しました。

 

まとめ

以上が勉強方法となります。

基本的には問題集を使った周回が主になります。この周回法は他の勉強でも沢山の方が提唱していますが、私は山口真由氏の「7回読み勉強法」からこの方法を知り、細かい方法は違いますが、真似するようになりました。忘却曲線だとか面倒くさいことを考えずに覚えることができるのでオススメです。

皆さんの合格をお祈りしています。

よくある質問

Q. 一発と科目合格はどちらがよいか。

A. 私は海技士2級筆記は大学3年、海技士1級筆記は大学4年の時に取得しました。どちらも一発合格です。基本的に私は科目ごとの合格よりは一発で全て合格することをオススメしています。

なぜなら、科目合格の場合の合格点比率が6割なのに対し、1発であれば5割となるからです。海技士試験は問題数も多くないため、一問一問の配点が(恐らく)高くなっている傾向があります。難易度としては一発合格のほうが低いのではないかなというのが私の考え方です。

 

Q. 参考書はどんなものがよいか。

A. 基本的には問題集のみで十分ですが、海事本がある図書館があれば、適当な舶用機器の工学書を借りてみてください。問題集にはさも当然のように専門用語が使われているので、それを調べるのに使えます。しかし、ネットで調べても出てこないレベルの専門用語であれば、それは工学書で調べるよりは解答を暗記してしまったほうが早いです。

 

Q. どのような問題が出るか。

A. ほぼ問題集と同じものが出ます。一言一句違わないものがほとんどですが、1科目に1問あるかないかで新問が出ます。点検系であれば当たり障りのないことを書けばよいですが、そうでなければあきらめましょう。

 

Q. 過去1年以内の問題は出ないって本当か。

A. 嘘です。私が1級を受けた時、確かに前回、前々回の問題までは出てきませんでしたが、1問だけ3回前の問題が出ました。勉強する際に1年以内にでた問題を消すことは良い作戦ですが、絶対に出ないと考え、まったく勉強しない、といったことはないようにしてください。

 

Q. 初めから1級を受けてよいか。

A. 2級を受けましょう。会社でのステップアップ時に2級海技士を必要とされることがあります。単純に3級海技士で3等機関士、2級海技士で2等機関士、1等機関士、1級海技士で機関長になると考えれば、1級海技士を実際に取るまでに2級海技士が必要となる期間が出てくることがわかると思います。